“両手いっぱいの好き”  『好きで10のお題』より
      〜年の差ルイヒル Ver.より
 


    春といえば何を連想しますか?
    新しい季節、暖かな陽射し。
    桜や桃、菜の花などなど、花が次々咲き乱れ、
    何となく足取りが軽くなる。
    重たいコートよ さようなら、
    軽やかなデザインのバッグと、
    おニューの髪どめバレッタ、
    それからそれから、
    パステルカラーのブラウスを新調しなくっちゃ。

      ―― あのね? それからね?

    大好きな誰かさんへ、お電話したくなる。

     「ねえ、一緒にどこかへ出掛けませんか?」

    そんな一言告げるため、
    ドキドキしながら お電話 掛けたくなる。






        



 まずは、材料とお道具を揃えます。はくりきこってゆう小麦粉に、ベーキングパウダーってゆう ふくらし粉。そいから“おから”も使うんだって。あと、本来はバターとお砂糖なんだけど、甘さ控えめのを作るからってことで、マーガリンと てんさい糖ってゆうお砂糖と。あとは卵と、お好みでアーモンドとかココア

 「馬鹿か、お前は。」
 「うに?」
 「少しでもカロリー減らそうとマーガリン使ったりしてんのに、
  何でまた ココアだアーモンドだ、脂肪分高いもんを足すんだよ。」
 「???     あ、そか。/////////」

 しまったしまったと ふわふかな頬を真っ赤にした坊やは、小早川さんチの瀬那くんで。まあ、こんくらいの考え足らずは こいつじゃなくてもやりかねねぇかと、自分のお怒り、自分でなだめた金髪の坊やの方は、蛭魔さんチの妖一くんで。

 「使う道具は、計量用のはかりとスプーンとカップ。
  料理用のボウルと、泡立て器に木ベラ。
  ラップとクッキングシート、サラダ油。
  あとは、冷蔵庫にオーブンってところかな。」

 流し台とか調理台も勿論使うぞと、誰もそこまでの揚げ足取りなんざしなかろに、一応 付け足した小悪魔様。PCで検索したレシピをプリントアウトし、わざわざ持参してくれたのみならず、セナくんチのキッチンにまで来てくれて、

 「おら、袖は まくっとく。エプロン…は、つけると却って危ねぇかな?」
 「なんで?」
 「あんま長いのをずるずるさせてると、踏んでつまずいてコケかねねぇだろが。」

 コンロや包丁は使わねぇけど、それでも“う〜ん”と。そのままだと、粉だのマーガリンだのお洋服へと飛ばしかねないのも、ほぼ確定的だろしと。まだまだ細っこい腕、一丁前に胸の前にて高々と組んで見せての、大人のようなポーズをつけて、うんうんと考え込んでから、

 「そーだ、体操服を着ろ。」
 「たいそーふく?」

 繰り返したセナくんへ、あれだったら動きやすいし、汚してもザブザブ洗えるから面倒がないだろ?なんて。まだ十になったばかり、小学生の男の子とは思えぬ言いようを示して見せるところが、

 “もうもう可愛いったらvv”

 すぐお隣りのダイニングにて、聞き耳立ててる小早川さんチのお母様を、可愛い可愛いと はしゃがせていたりする。そんなところへ、

 「おばさん、聞こえてますかぁ?」

 今更遅いと判っちゃあいるが、それでも一応、他のお姉さんたちにそうするようのと公平に。
「セナくんに、たいそーふく、着せたげてください。」
 かわい子ぶりこなお声で話しかけるところが、

 「なかなかにご立派な徹底ぶりだよねぇ。」
 「そーかよ。」

 いちいち面倒なだけじゃねぇかと、ややもするとうんざり顔になった黒髪の総長さんへは、
「なにスネてんのかな。あ・そうか。妖一が葉柱くん以外の他の人へ気を遣うの、何だか ヤなんだ。」

 朗らかな茶々が放られたもんだから。

 「な…っ。////////」

 勝手なことを言ってんじゃねぇっと、これでもほんの少し前までは随分な規模の“族”を束ねていた、暴走族の元ヘッドを怒らせてしまうよな物言い、平気でやっちゃう怖いもの知らずなところ。もしかするとセナくんばりかもな天然様、現役アイドル・桜庭のお兄さんだったりし。無論、葉柱さんの威容というか威厳ある迫力というか、いまだその気勢が衰えていたりはしない。ただ、

 “真っ赤になってるところが可愛いったらvv”

 やんちゃ筋の人ってのは、意外なところが純情だったりロマンチストだったりしますからねぇ。
(苦笑) そういうツボを心得てのこと、そして何より、悪い人じゃあないとの認識あっての、親しみが沸いてしようがないと来て。それで、

 『あのね、ヨウちゃんにお願いがあってさ。』

 どうしよ・どしよと、べしょべしょと困り顔になっていた、小さなセナくんを引き合わせに、その時間ならと的を絞って…家へ帰っていよう時間じゃあなくの、賊徒大学まで足を運んだ彼であり。

 “だってさ。そんなもん本人同士で何とかさせなって、
  大人のご意見だけで終わらせられちゃあ困ることだったし。”

 小さなセナくんの困りごと、聞けばきっと、妖一くんだって捨て置けないと身を乗り出したくなるだろに。幼いセナと同い年なくせに、子供目線の見解というもの、時にすっ飛ばすところがある妖一くん。でもね? あのね? 本当はナイーブだし、繊細な心の機微っての、実はよくよく知ってる子。だから、

 “ロマンチストで面倒見のいい、葉柱くんが同座してりゃあ、
  そういう見解、しょうがねぇなぁって順番で出しやすいだろうしねvv”

 うふふんと、うまく運んだことへと向けて、甘く微笑ったお兄さんの視線の先では、小さなパティシェが二人、準備万端整えて、最初の手順、粉だのマーガリンだのを、1つ1つ測っておいで。早くも頬っぺに白っぽいものなすくりつけつつ、それからそれから、いよいよの、

 「おーし、そんじゃあ取り掛かるぞ。」
 「おーっ!」

 小さなセナが一丁前に勇んで見せての、拳を上げるところとか。見られないとは、進がさぞかし残念がろうにと。あ〜あと言いつつ、携帯電話の動画機能できっちり収録している桜庭であり。そんな彼に付き合いながら、
「大体だ。何でまたいきなり、こういう運びになっとんだ?」
「ありゃ、さっきガッコのグラウンドで言ったじゃない。」
 聞いてなかったのかい?と、かっくりこと小首を傾げるアイドルさんへ、
「だからっ。」
 しょんぼりと肩を落としたセナくんを、大丈夫だからと宥めつつ、 賊徒学園のグラウンドまで一緒にやって来た桜庭は、 セナくんが意気消沈している事情を出来るだけ判りやすく説明しており、

 『ファンだっていう女の子たちからの、差し入れのクッキーやバウンドケーキを、
  珍しいことには受け取っちゃったんだよね。』

 いつもは素っ気なく断る彼が、先日の何日かだけ、すんなりと受け取っていて。それを見てのこと、が〜んとショックを受けたらしいセナくんだったという顛末へ、こりゃあ何とかしてやらにゃあと、一肌脱ぐことにしたのが こなた様。
『僕としては進の心境も分かるもんでね。』
 だってさ、今は小さいセナくんだからそういうもんかって納得してるけど、せっかくの手作り、頑張ったものを、貰えませんと撥ねられるの、結構痛いもんだって、いつか気がつくかもしれないでしょう?

 『自分のしたことで、
  自分が“案外と冷たいんだ”なんて思われるのは構わないけれど。
  どんな事情や理由があろうと、大切な人が傷つくのだけは避けたいもんじゃない。』

 そんなややこしい言いようをしていた彼であり。しかもしかも、
『あとは、やっかみ半分にセナくんへ八つ当たりする子が出ないとも限らないし。』
 そちらへこそ心当たりがあるものか、何ともしょっぱそうなお顔になったアイドルさん。そういや、子役なんかでテレビに出ている子供らは、自慢なんてしちゃあいなくても、やっかみからの苛めに遭いやすいと聞く。何で自分には叶わぬことが、あんたには叶うんだと感じるものか、理由になってないような“感情”からの攻撃が、振りそそぐことが少なくないのだそうで。

 “二枚目やかわいい子も、それなり大変なんだなぁ。”

 こたびの場合は、あくまでも“そうならぬように”という防御を前以て取ったという段階なのだろが。それにしたってと、そんな苦労を経験済みならしき桜庭へ、感慨深げなお顔になる葉柱であり。

 「えっと、まずはマーガリンをボールへ分量入れて、
  泡立て器で掻き混ぜて柔らかくなるように練っていく。」
 「はいっ。」

 そういや過去にも、バレンタインデーのチョコを作ったお二人さん。
「そういやヨウちゃんて、あれほど何にでも器用なんだもの。お料理だってお任せなんだろねvv」
 セナくんを連れて来ての事情をお話しし、じゃあこれでと帰っても良かったところが、

 『あ〜、その何だ。』

 どういう訳だか引き留めたのが、妖一くんの側の後見だった葉柱で。今度は桜庭の側が“???”という怪訝そうなお顔になったものだったけれど、

 「…………なんでマーガリンを混ぜてるだけの工程で、
  泡立て器が2本とシチュースプーンが4本も、流し桶につかってるんだろう。」

 よ〜く見ていたはずだったのに、いつの間にという不思議なことに、そんな洗い物が増えており。これでもついさっき、お粉や砂糖を測るに当たって使った色々、計量カップやスプーンを、これでもかと何度も洗った後だっただけに、テーブルの上には、使用後の器物は何にもなかったのは言うまでもなくて。

 「次は、えっと。てんさい糖を3回くらいに分けて摺りまぜ、
  白っぽくふわふわになるまで掻き混ぜる。」
 「はいっ。」

 妖一くんがボウルを押さえ、泡立て器担当は主役のセナくん。テーブルを調理台にと構えると、二人とも微妙に背丈が足らなくて。横合いからという押さえつけやら、掻き回しになるものだから。時折かかとを上げての、微妙に背伸びして励む姿が、何とも言えず可愛らしいのだが、
「…洗ったばっかりの泡立て器を、何でまた使い足す。」
「さてな。作業していて具合が悪く感じるんじゃね?」
 ぐらつくボウルのすべり止め、台の上へと置いた濡れタオルも、気がつけば5枚目になっており。まま、そちらは粉が飛んだの、マーガリンが飛び出したのと、汚れたからだと分かるのだけれど、

 「次は、卵をやっぱり分けて入れ混ぜて、おからもちょこっとずつ足すんだと。」
 「ふみ、何か疲れて来たよぉ。」

 じゃあ、ちょっとだけ代わるか?と訊けば、ん〜んと かぶりを振る健気さであり。そんなちびっ子シェフ二人が頑張るのと背中合わせになって、
「どうしてこんなに次々と、洗い物が出るんだろ。」
「慣れろ。」
 油断すると次々増えてく洗い物へと、頑張って勤しむお兄さんたちだったりし。……そっちも健在らしいです、妖一くんの不思議な調理。
(苦笑)

 「よいしょ、よいしょ、まだ?」
 「ん〜、もっと白っぽい、クリーミーな感じになるまでだと。」
 「うん。」

 優しい気遣い、初めてしてみた、朴念仁なお不動様へ。愛情一杯込めてるからね、どうか受け取って下さいねと。どうせなら、この作ってる工程を見せたげるのが一番な眼福だろうに、そんなところをクススと微笑うお兄さんたちに手伝って貰いつつ、頑張るちびセナくんの手作りクッキー。どうかどうか、美味しいのが出来ますように……vv




    


  おからクッキー(25個分の場合)

  ・材料…おから50g、薄力粉100g、ベーキングパウダー小さじ1、
   マーガリン(バターの代わり)30g、
   てんさい糖(砂糖の代わり)20g、
   卵1/2個分

  ・作り方

    1.クッキングボールにマーガリンを入れ、
     泡立て器でなめらかになるまで掻き混ぜます。
      その後、てんさい糖を3回くらいに分けてすりまぜ、
     白っぽくふわふわになるまで掻き混ぜます。

    2.溶きほぐした卵を2〜3回に分けて少しずつ加えながらまぜていき、
      おからを加えてさらにまぜ合わせます。

    3.ここで木べらへ持ち替えて、
      クッキングボールの中に、
     ふるい合わせた薄力粉100gとベーキングパウダー小さじ1を加え、
      さっくりとまぜ合わせてからラップ(サランラップ)に包みます。
      その後、冷蔵庫で30分間じっくりと寝かせ、
      直径3cmの円形にクッキーの型を作り、
      サラダ油を塗るかクッキングシートを敷いた天板へ並べ、
      170度のオーブンで15分間焼きます。

    4.揚げ物用の油きりバットなどの、高さのある網などに取り、
      粗熱を冷ましたら出来上がりです。




  〜どさくさ・どっとはらい〜 09.04.04.〜04.05.

*素材、お借りしましたvv I-MIL Free 素材集サマヘ 


  *ちびセナくんのお話、ちょっと書いてないなと思っての手をつけてみました。
   子ヒル魔くんは相変わらず、
   不思議なクッキングをしてしまうのが治ってないらしく。
   洗い物班つきじゃあないと、台所はたちまちカオスになってしまいます。

    「…なんでおでんナベが出てるんだ?」
    「深く考えてるとハゲるぞ。」

   インスタントラーメンとチャーハンだけで、
   とんでもない台所にした前科のあるお人ですものね。
(笑)

   あと、進さんは甘いものが苦手というより、
   カロリーと腹もちを考えたご飯を、時間も決めてのきちんと摂取しているので、
   それ以外は、あんまり食べないのだと思われます。
   ので、他で調整つけた上でなら、
   若しくは、カロリー消費の高いトレーニングを多めに組み込んで、
   ちゃんと食べてくれますよ? セナくんvv

めるふぉvvめるふぉ 置きましたvv *

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